ニュールセナにおける障害者ピアカウンセリングの紹介
2009年11月21-22日
イロイロ市アレバロ プンタビラリゾート
2009年10月2-3日に、私とイロイロ市障害者協会(ADP-I)のCBR中核グループは、ニュールセナの障害者団体において、障害者の平等に関する研修(DET)と、エンパワメントに関するセミナーを開催しました。ニュールセナは、JICAの障害者に優しいまちづくり(NHE)プロジェクトが実施されている町です。開催期間中、私はNHEプロジェクト調整員の伊藤奈緒子さんと会い、現地の障害者のために何が最も必要か話し合った結果、ピアカウンセリングのワークショップを開催するという考えに至りました。まず私は、彼女に現地の障害者の状況を説明しました。それは、彼らのほとんどが学校に行く機会が与えられないこと、他の人々と関わるのを恐れ、常に家の中にこもっていること、社会の一員として人権を行使できることを知らないことなどです。私は、障害者のピアカウンセリングワークショップは理解しやすく、楽しみやすいアプローチにすべきだと提案しました。
10月の最終週に私とADP-Iの中核グループは、会合を開き、ワークショップの全体案をまとめました。その結果、JICAとニュールセナ市の合意を得て、11月21-22日にかけて、イロイロ市アレバロのプンラビラリゾートにおいて、障害者ピアカウンセリングの入門コースを開催することが決定しました。
プログラムは、まず「自分自身について」考えるワークショップとして、12名の参加者が以下の4つの質問に答えることから始めました。
答えはノートに記入し、自身で保管します。
次は、「エンパワメント」についての講義です。最初に、参加者たちは4つのグループに分かれ、各グループにパズルが配られました。彼らは何のパズルであるか、見当もつきません。(パズルは人間の各部位のピースから構成され、それぞれに11の肯定的な言葉が書かれています。各ファシリテーターは、密かにパズルの残り1ピースを隠し持っています。このワークショップの目的は、参加者は、どのパズルも我々障害者同様に、ある部分が欠けていたり機能しないため、完璧でも完全でもないが、ひとりの人間として欠けているものを補える何かが私たちにもあることに気付いてもらうことです。)ワークショップの後、私はピアカウンセリングにおけるエンパワーメントの重要性について講義しました。その後、私はピアカウンセリングの定義、目的、歴史について講義しました。
私はまた、「ピアカウンセリングの基礎概念」についてのワークショップを行いました。ここでは、参加者が以下の質問について答えます。「今あなたは障害者ですが、あなたの人生計画は何ですか?」それに一人一人が答え、障害者としての人生計画についての意見を皆で共有します。
次に、CBR中核グループの同僚の一人が、「ピアカウンセリングの実施における基本概念」について講義しました。彼女は、障害者の人生における、創造性、賢明さ、愛、喜び、連帯の精神の重要性について説明しました。その後参加者達は2グループに分かれ、上記のキーワードに基き、10~15分のロールプレイを行いました。
次に私は、ピアカウンセリングにおける「人間関係」と障害者間の友情の大切さについて講義をしました。私のリソースパーソンである Abner Manlapaz氏(彼は日本の自立生活センターで3週間研修を受けています)は、2グループに宿題を出しました。宿題は、今日のセミナーで学んだことについてで、各グループは、次の日にそれを発表します。また彼は、「APCD(アジア太平洋障害者センター)の自立生活」という映像を参加者に上映しました。
各グループは10分ずつ、昨日のセミナーで学んだことについて発表しました。続いて、「ピアカウンセリングの方法と規則」について講義を行いました。私は「ピアカウンセリングで用いられる用語」として、RC(再評価のカウンセリング)、感情表出、パターンの周期、反論、親密性、セッション、引き戻し、賞賛、宣言、新しい発見、意見の述べ合い、などについて説明しました。次に私は、カウンセラーとクライアントの役割について講義しました。講義の後、Abner氏は感情表出の大切さについて説明しました。
その後、私たちはペアになって数セッションのピアカウンセリングを実施しました。また、CBR中核グループの同僚の一人が、「個人の紋章」と呼ばれるワークショップを行い、前日のワークショップに関する意見や質問を参加者同士で共有しました。そこでは、「自分自身について」のワークショップで答えを書いて記入した内容と、「ピアカウンセリングの基礎概念」についてのワークショップで皆に発表した内容を見比べて、その違いを共有しあいました。
その後、Abner氏は、ニュールセナの障害者のピアサポートグループ計画について、参加者と話し合いました。Abner氏と私の二人の同僚 (Rodinna Laviana氏と Analyn Porras氏) は、各参加者に、「個別カウンセリング」 を実施しました。私たちは最後に、「賞賛と新たな発見」についてワークショップを行い、全員が2日のセミナーを通じて得た感情を共有しあい、結びの言葉をもって閉会しました。
伊藤奈緒子さんと日本のテレビ局がJICAのNHEプロジェクトのドキュメンタリー撮影のためイロイロ市ニューレセナにやってきました。ちょうど同じ日、私と同僚たちは、ニュールセナの障害者ピアカウンセリングのフォローアップを行いました。ほとんどの参加者が、学んだことを忘れておらず、2日間のセミナーで持った感情や自由を大切に感じており、とても嬉しく思いました。
これは、私が2年前にADP-IのCBR中核グループを訓練して以来、初めての障害者ピアカウンセリングセミナーでした。イロイロの障害者にピアカウンセリングを実施したことで、そこでさらに多くの障害者が、互いにエンパワーしあい自信を高めていくでしょう。それにより、障害者が団結し、希望や願望を持つことで、社会の障害者に対する悪影響を変えていけるでしょう。そして、一人の人間、そして社会の一員として、長い間奪われた尊厳と尊敬を与えてくれるでしょう。