Duskin Leadership Training in Japan

活動報告

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第7期生 マークの活動報告②

イロイロ市における障害者のためのピア・カウンセリング講座の実施報告

2012年7月25~26日
フィリピン・イロイロ市ラパス
ASEC, D’Alzon Formation House Bo.Obrero Lapuz

報告者: マーク・エスペソール
第7期生
フィリピン・イロイロ市障害者協会(ADP-I)

2012年の3月、マニアのライフ・ヘブン自立生活センター(Life Heaven IL Center Manila)で働いているアブネル・マンラパス氏(Abner Manlapaz)から、一緒にプロジェクトをやらないかという提案を受けました。APNILの自立生活プロジェクトとして、何か実施したいというものでした。そこで、私の所属団体であるAPD-Iの理事会を説得し、やってみることにしました。その内容はイロイロ市の障害者のためのピア・カン講座ということで合意し、タイトルは“Introduction to Peer Counseling for Persons with Disabilities Workshop Seminar for Iloilo Provincial Federation of Differently-Abled Persons (IPFDAP)”に決まりました。

話が少し遡りますが、2009年の11月、私はイロイロ市のニュー・ルセナ地区にいました。JICAのイトウ・ナオコ氏が従事していらしたNon-Handicapping Environment (NHE) プロジェクトのお誘いにより、障害者のためのピア・カン講座(2日間)をマンラパス氏と一緒に行っていました。それ以来、自分の地区においてもぜひ同様のセミナーを実現したいと思っていました。

数回の協議を経て、ついにAPNILと日本のヒューマンケア協会の賛同を得ることができました。これは3月のことですが、APNIL事務局と講師となるマンラパス氏の都合により、講座は7月25・26日の2日間に決まりました。その月は17日から23日まで「全国障害予防リハビリウィーク」となっており、私の地域では第1回フィリピン第6地域(西ヴィサヤ)障害者地域会議が予定されていました。それなので、23日まで関係者は皆大忙しであることが分かっていたので、上記の日程になりました。しかし実際には、7月26日もIPFDAPの新役員の就任式と重なっていました。それでも参加者希望者は、ピア・カン講座を優先してくれました。また、私たちは4月16日に「イロイロ市自立生活セミナー」を開催していましたが、そのときの参加者数名も集まりました。さらに、私たちはイロイロ市脳性まひ協会の人々や、障害を持つ若者のバリアを破る会のメンバーも招聘しました。加えてAPDIからも数名の申込みがあり、参加者は全部で12名となりました。

講座の準備をするマークさん(写真右)

講座の準備をするマークさん(写真右)

第一日目(7月25日)

まずはじめは、「私は誰?ワークショップ」です。講師を含めた全員が輪になり、お互いに以下の質問をします:

  • ―いつ、どのようにして障害を持ちましたか?
  • ―障害者になってから経験した最も忘れられない出来事は何でしたか?
  • ―自分のことをどう思いますか?
  • ―自分を何かと比較するとしたら、何としますか?

参加者は皆、自分のことを話したり、障害者として抱える問題について触れたりしました。このワークショップの目的は、話したり人の話を聞いたりすることで、参加者が自己開示をすることです。

講座の様子
講座の様子

そして次に(本題に入る前に)、「エンパワメント」のセッションを行いました。人間の形をしたパズルがあり、各参加者はピースを受け取ります。自分のピースがどの部分なのかは分かりません。各ピースには11項目の「前向きな態度」が書かれています:

  • ―変化を受け入れる
  • ―積極性
  • ―責任感
  • ―学ぶ姿勢
  • ―感情を上手に使う
  • ―失敗から学ぶ
  • ―向き合う姿勢
  • ―相対的思考
  • ―自尊心
  • ―現実的な視点
  • ―いまを生きる

ところでパズルの人間は、体の一部分が欠けています。そのパズルを完成させたとき、参加者はどの「人間」にも足りない部分があることに気付きます。そして、足りない部分は他の要素で補うことが可能であると学ぶのです。このワークショップの後、私は「エンパワメント」と「ピア・カン」について講義をしました。それらの重要性について伝えたいと思いました。

  • ―ピア・カンの定義(広義と狭義)
  • ―ピア・カンの目的
  • ―ピア・カンの歴史

エンパワメントのセッションの様子。人間の形をしたパズルを組み立てます。
エンパワメントのセッションの様子。人間の形をしたパズルを組み立てます。

続いて、「ピア・カンの基本」という講義を行いました。これは、参加者にピア・カンの基礎について学んでもらうためです。具体的には:

  • ―経験
  • ―障害についての情報と知識の提供
  • ―個人的なことや感情的なことを聞くとき

などについて話しました。それから、障害者団体の設立の2つの目的についても話しました:

  • ―ゴールの設定
  • ―力強く前向きなイメージの確立

その後、CBR Core groupの私の仲間であるアナリン・ポラス氏が「ピア・カン実施の基本姿勢」について講義し、障害者の生活における創造性・知恵・愛・喜び・連帯感の重要性について語りました。

それから、それらのテーマに沿ったロールプレイを行いました。

  • ―創造性
  • ―知恵
  • ―愛
  • ―喜び
  • ―連帯感

最後に、ピア・カンにおける「人間関係」と障害者の「友情」の大切さについて私が講義しました。友情において大切なのは:

  • ―信頼
  • ―尊敬
  • ―自信

です。そして、すべての根底には愛があります。

第二日目(7月26日)

この日はマンラパス氏が担当しました。まず、「ピア・カンの目的」を参加者に問い、昨日の復習から始まりました。そして講師は「カウンセラーと相談者の役割」について話し、参加者に実際に90秒間のカウンセラーと相談者の体験をしてもらいました。その後、参加者に感想を聞いていきました。

マンパラス氏は「感情を解放すること」の大切さを強調しました。あらゆる状況において、どのように感情を表したらよいのかについて説明しました。また、講師は以下のことについても話しました:

  • ―ピア・カンの方法
  • ―ピア・カンのルール

それから、「グループ・カウンセリング」と「ピア・カン:キーワードと規則」というテーマで講義があったほか、参加者らは「ピア・カンにおけるサポート・グループ」の重要性についても・学びました。・最後に、マンパラス氏は自立生活プログラムについてプレゼンをし、ビデオを上映しました。

*   *   *   *   *

この講座の開催において、以下の反省点が挙げられます:

  1. 講師の予定に合わせて開催したところ、多くの参加者にとっては難しい日程となってしまった。
  2. 講師はタガログ語を話し、参加者はイロイロ訛りで話したので、両者のコミュニケーションが難しい場面があった。
  3. ローカルな(人的その他の)資源を使うことに関して、自分たちにILPを実施するためのどれほどのキャパがあるのかを量るのが難しかった。

しかし、反省点はありますが、この講座を開催できたことは大きな達成でした。イロイロ市において、IILとCBRの両方が可能であるということが証明されたと思います。

(おわり)

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